妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、妊娠中に血糖値のコントロールがうまくできなくなる糖代謝異常のことを言います。通常の糖尿病よりも診断基準が厳しく、妊婦全体の約8%が診断を受けているとも言われています。

妊娠中に血糖値が上がりやすい理由

妊娠するとホルモンの影響で、普段よりインスリンの働きが上手くいかなくなります。また、インスリンを壊す働きをする酵素が胎盤でつくられます。そのため、妊娠中は普段より血液中の糖が多くなり、血糖値も高くなりやすい状況にあるのです。特に妊娠後期には、血糖値を正常に保つために、インスリンの必要量も増えていき、高血糖になる場合があります。
自覚症状はほとんどないため、気づかないうちに血糖値が高くなっていることもあり妊婦健診をきちんと受けることが重要です。

診断方法

妊娠糖尿病の診断には、まずスクリーニング検査が行われます。スクリーニング検査で妊娠糖尿病の疑いがあるとされた場合には、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)という検査を行います。
75gOGTTの検査では、空腹時とブドウ糖75gを飲んで1時間後、そして2時間後の計3回、血糖値を測る採血を行います。下記の値にひとつでも当てはまれば、妊娠糖尿病と診断されます。

①空腹時血糖値≧92mg/dL
②1時間値≧180mg/dL
③2時間値≧153mg/dL

お母さんや赤ちゃんへの影響は

お母さんへの合併症

妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎症およびそれらの悪化

赤ちゃん(胎児や新生児)への合併症

流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡など

小児期への合併症

小児期から成人期にかけての肥満、メタボリックシンドローム

妊娠糖尿病になると、上記のように母体だけでなく赤ちゃんにも合併症をもたらします。
このような影響は、適切に治療や対処を行うことで予防できることが報告されています。そのため妊娠糖尿病と診断された場合は、主治医の指導を受けながら食事や栄養に気を付けることがとても重要となります。

娠糖尿病の治療や対策

軽度の妊娠糖尿病であれば、食事療法を中心に治療を進めることが多いです。病院で受ける栄養指導に従って、食事療法を進めてください。運動療法については、妊娠中は難しい場合もありますので、必ず主治医の許可を得て行うようにしましょう。一般的には、ウォーキングや体操、ヨガなどの有酸素運動が血糖値の改善に効果的と言われています。

食事療法や運動療法のみでは血糖値の改善が見込めない場合には、インスリン療法を行います。妊娠中の飲み薬は、胎児に影響を与える可能性があるため使用できません。

出産後には多くの場合、血糖値が正常に戻る場合がほとんどです。分娩後6〜12週で再度75gOGTTをすることをお勧めします。妊娠糖尿病と診断された方は、将来糖尿病になる確率が7~8倍に上がると言われています。出産後も引き続きバランス良い食事と運動を心がけて生活するようにしましょう。